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ちらり、と高槻さんが私の反応を盗み見るように一瞬だけこちらに顔を傾けた。けど、また余所を向く。
「俺、嘘はつけても出鱈目なことは言えない性格だから、学校離れてもずっと一途でいられるとか、言えないよ?」
私は首を縦に振る。
「めんどーな奴だから、会話一つとっても苦労すると思うよ?」
私はまた頷く。
結論を先走ろうとはやる気持ちをなんとか抑える。
「……そんな奴でも良いなら、手、とって」
俯いたままの視界は何も変わらない。
だけど少し顔を上げると、目の前に手が差し伸べられていた。
高槻さんはさっきからずっとこちらを見ていない。それが少し寂しいような気もするけれど、でも見られていたら私はきっと指先一つすら動かせない。
私はその指先に自分の指先を重ねる。
ツン……と鼻奥が痛くなって、私は鼻を啜る。
ぎゅっと目を閉じても、目蓋の隙間から垂れたものが頬を伝う。伸ばしていない方の手で拭ったけれど、その合間をかいくぐった数滴がそのまま顎先からしたたり落ちる。
それを見たであろう高槻さんが、「あーあ」と力の抜けた声をあげた。
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