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「確かに俺は嘘もつくけど、それは自分ごまかすときだけ。こんだけ言っといて今更何をごまかせっていうの」
ちょっと怒ったかのような口調だった。
高槻さんは意外と照れ屋だ。シャイだ。だからその口調は照れ隠しなんだと思う。
私はそんな高槻さんの手を握る自分の手に更に力を入れる。
「高槻さん」
「はい」
「好きです」
ちろり、と上目で彼の顔を確認する。
彼は目を細め、ほんの少し口を尖らせた。
幼さを思わせる拗ねたような顔。
好意を直接向けることも向けられることも慣れていないらしい。そんな態度が年上なのに可愛く思えて、私は顔を隠さずに笑みを返した。
「……それ、さっき聞きました」
「何回言ってもいいかなぁと思いまして。ダメですか?」
「……ダメ、じゃないけど」
高槻さんは声を小さくしながら語尾を濁らせる。
それから観念したように一つ息をついて、私の手を握り返した。
「俺もです」
『好き』は言ってくれないんですね。
それが顔に出ていたのか、高槻さんは私の額を軽く弾いた。
「今日はもう勘弁してってば」
街灯に微かに照らされる高槻さんの顔は少し赤い気がした。
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