第8話  【side――Y.S】

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「確かに俺は嘘もつくけど、それは自分ごまかすときだけ。こんだけ言っといて今更何をごまかせっていうの」 ちょっと怒ったかのような口調だった。 高槻さんは意外と照れ屋だ。シャイだ。だからその口調は照れ隠しなんだと思う。 私はそんな高槻さんの手を握る自分の手に更に力を入れる。 「高槻さん」 「はい」 「好きです」 ちろり、と上目で彼の顔を確認する。 彼は目を細め、ほんの少し口を尖らせた。 幼さを思わせる拗ねたような顔。 好意を直接向けることも向けられることも慣れていないらしい。そんな態度が年上なのに可愛く思えて、私は顔を隠さずに笑みを返した。 「……それ、さっき聞きました」 「何回言ってもいいかなぁと思いまして。ダメですか?」 「……ダメ、じゃないけど」 高槻さんは声を小さくしながら語尾を濁らせる。 それから観念したように一つ息をついて、私の手を握り返した。 「俺もです」 『好き』は言ってくれないんですね。 それが顔に出ていたのか、高槻さんは私の額を軽く弾いた。 「今日はもう勘弁してってば」 街灯に微かに照らされる高槻さんの顔は少し赤い気がした。
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