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◇
「お、おはようございます……」
朝。
全ての始まりでもあるいつもの電車内で、私は日常の一環となったその人に挨拶をする。他の会話はそこまででもないけど、なんでか朝の一言は今でも照れる。
高槻さんはいつも通り私の姿を見ると手を軽く上げて応えてくれる。
あれからというものの、私たちに大きく変わりはない。
頻繁にラインをするようになったぐらいだ。
その時にデート云々の話は何度か出たが、私も高槻さんも部活でオフがないためしばらくはお預けだ。今のところ、とりあえず一ヶ月は無理っぽい。
そんなこともあり、特に大きな変化はない。
「そうだ、マキちゃん」
「なんですか?」
「定期演奏会の後、暇?」
「……? 翌日は片付けがあるのでオフじゃないです」
「違う違う。当日の話」
「………? 片付けが終われば解散ですけど」
あっそう、と高槻さんは冷たさすら思わせるほど淡々と答える。
「……じゃ、その後飯とか一緒にどうです?」
「………!?」
驚きのあまり高槻さんの顔を見上げる。けど、それとほぼ同時に高槻さんの大きな手が言葉通り私の目の前に覆うように現れた。
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