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「やっぱりいたか」
前2つと違って決して大きな声ではなかった。
だが、私の肩がまたびくっと跳ね上がる。
もう遅いけれど、私は笹原君がいる掃除用具入れのドアを勢いよく閉めた。
「今更隠しても遅いって。別にあいつに売ろうってわけじゃないし、笹原よこしてくれる?」
入ってきたのは、厳しそうな人ではなかった。かといって優しそうな人でもない。
知らないけれど、初めて見た人ではない。見かけたことが何度かある。
その時異常に目つきが鋭くみえるのは、今の状況のせいなのか。
その人は口元で微笑みながら、片手を前に出してきた。
「その声、高槻先輩?」と掃除道具入れから声。
「おー、俺だ。顧問が呼んでんぞ」
ガタン! と掃除道具入れが揺れる。そのままガタガタと小さく連続的に揺れ続けたので私はドアを開けてあげた。
「サンキュ」と短く言いながら出てきた笹原君は少し安堵した表情だった。顧問以上にさっき来た人が怖いのだろうか。笹原君と似たようないかにもな練習着を着ていたので、あの厳しそうな人はおそらく笹原君のとこの部長だろう。
更に言えば、今教室にいる『高槻先輩』と呼ばれた人も同じような格好をしている。
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