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「じゃあ凛は、もう佐々木先輩の事好きじゃないんだね?」
「え?」
「外見も、口調も変わってしまった先輩は、もう全くときめかないんだね?」
「そんなこと……」
「もしそうなら。最初から、凛の恋は恋なんかじゃなかったんだよ」
私の前の席で読書をしていた有は、不服そうに眉をしかめたままページを一枚めくる。
何気なく本の帯にチラリと目を向けると、そこには『五分で泣ける、超感動作品』と書いてあった。
「ねぇ凛。アンタはさ、佐々木先輩が不良でかっこよかったから好きになったの?」
「え!……いや、それもあるけど」
「それだけじゃないんだよね?」
「……うん」
そうだ。確かに先輩は皆に怖がられていた不良だったけど。後輩の私を助けてくれて、意外と優しい一面を持っている。そんな佐々木竜二先輩だから好きになったんだ。
「じゃあ、まだ追いかけなよ」
「追いかける……」
「まだ先輩との距離を感じてるなら、頑張って追いかけろって事。んで、それでも突き放されたら私の所に戻ってきな。私はずっとアンタの後ろで見守ってるからさ」
本を閉じて、有は私の頭を優しく撫でた。
有はずっと変わらない。ずっと変わらず、私の側にいてくれて。支えてくれた。
「有……うん。有難う」
きっと有が男だったら、私は完璧に惚れてたと思う。
「じゃ、本の続きは家でゆっくりと見ることにしますか。ほら、早く行ってきな。先輩の所に」
「うん!行ってくる!」
鞄を持って、私は先に教室を後にした。
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