3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
近づけない先輩との距離
あれから、気持ちと頭がグルグルして仕方ない。
だって、ずっと会いたかった人にようやく出会えたと思ったら。その人が不良からオネエになっていたなんて。そんなの誰だって戸惑うに決まっている。
「しかも、私より綺麗だったし」
すぐに先輩だと気づけなかった悔しさと、屋上で大の字になって寝ていた姿を見られた恥ずかしさ。そして女の私より綺麗になってしまった先輩の姿に、思わず自分の情けなさを感じて。もう色々と泣くしかない。
「あら、また会ったわね。凛ちゃん」
「せ、先輩」
屋上で一人座り込んで考え込んでいる中。きめ細やかなサラサラの黒髪を耳にかけて、先輩は私の顔を心配そうに覗き込む。
近くで見ると、確かに佐々木先輩の顔だ。
目付きや傷は化粧で隠してるみたいだけど、ちゃんと先輩だって分かる。
そう思うと、ずっと恋い焦がれていた人が私のすぐ側に居るんだって実感して、緊張が全身を縛り付けてくる。
大丈夫かな?私、変な顔してないかな?匂いとか臭くない?
「なんだか、顔が赤いわよ?」
「え!え?いや!気のせいですよ!あはは!」
やっぱり気が付かないよね。私が先輩を好きって事。
というかそもそも、今の先輩は私みたいなギャルってタイプに入るのかな?
今は先輩不良じゃないし。オネエだし。
「は!もしかして男性の方が好みだったりして!?」
「何を言ってるの?」
「先輩!どうして先輩は不良やめちゃったんですか!?何か理由があるんですか!?」
「え?あ、いや……そっか凛ちゃんは昔のアタシを知ってたんだったわね」
しかも一度先輩に助けられてから、先輩一筋なんです!
までは、流石に言えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!