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「そうね。あえて言うなら……近づきたい人がいたからよ」
「えっ」
先輩も、私と同じ理由で。自分を変えたっていうこと?
じゃあ既に、先輩には好きな人がーー。
「でもね。このアタシ嫌いじゃないの。こっちの方がとても楽でね。喧嘩もしなくていいし」
「……」
「こっちのアタシの方が、大事な人を傷つけなくてすむから」
私の隣にいる先輩が、まるで別人に見えてくる。
先輩は先輩なのに。
「ってことは、もう喧嘩もしてないんですね」
「えぇ。もう他校からも喧嘩を売られることはないし、昔みたいに一人じゃない。沢山友達が出来たし、喧嘩しないおかげで顔も傷つかないからお化粧だってバッチリ出来るわ!後は、こんなアタシを彼女に認めてもらえるようになったら……その時は気持ちを伝えようと思っているの」
清々しい笑みを浮かべて、私を見つめる先輩の目は。ずっと私が先輩に向けてきたのと同じ目をしていた。
お願いだから、そんな目を私に向けないで。
どこの誰かも知らない人に対する感情を、私に伝えないで。
私は変わった。先輩に近づくために。
先輩は変わった。その人を傷つけない為に。
私と先輩は一緒なはずなのに、私だけが好きな人に近づけない。
こんな近くに居るのに。こんなに話せているのに。
先輩との距離は、離れていくばかりだ。
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