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「何でまだみゆきちのが高いんだよ!俺、かなり寝たのに!1リットルも牛乳飲んだのに!」
「…やっぱアホだな、この人」
心底悔しそうに言う先輩に、呆れた表情を向けながら呟けば、「ひでぇ!」と先輩はショックを受けたような表情を浮かべる。
「みゆきち!俺、先輩だよ?!」
「知ってます」
「知っててコレ?!」
嘘だろ?!と声をあげる先輩に、「先輩、部活行きますよ」と掴まれていた手から、ゆるりと抜け出して歩き出せば、「あ、コラ、置いてくなよ」と先輩の抗議の声が近づいてくるものの、声に答えることなく、校舎入り口へと歩いていく。
「かずくん、みゆきちゃん!」
私と先輩の名前が、朝であっても、可愛いらしい元気な明るい声に呼ばれる。
その声の持ち主は、先輩の幼馴染で、先輩のクラスメイトの三橋先輩で、「かずくん、相変わらず背が伸びてないの?」と三橋先輩はクスクスと楽しそうに笑っている。
「おいコラ!杏奈!」
「おはようございます。三橋先輩」
「おはよう、みゆきちゃん」
ふふ、と笑う三橋先輩の黒く長い髪がさらりと揺れる。
可憐な美少女、という言葉がぴったりな三橋先輩に「無視かよ!」とこの中で一番、身長の低い先輩が、非難の声をあげるものの、三橋先輩は、うふふ、と笑いながら、先輩の頭に片手をポン、と乗せる。
「かずくんは、このサイズだから良いのよ」
「おい。杏奈お前な…」
「このサイズだから、可愛いんじゃない」
語尾に音符がつきそうなくらいに上機嫌な表情で、グリグリと三橋先輩は、かず先輩の頭を撫で回している。
「ちょ、お前っ、まじでやめろ!?」
「もうちょっと!」
グリグリ。ぺたぺた。そんな効果音で、嫌がる先輩を触り続ける三橋先輩は、まるで小動物を愛でるかのようで、時々、んふふ、とか言いながら触り続けている。
かず先輩もかず先輩で、耳を赤くさせながらも、振りほどくような素振りも見せない。
その様子を見る度に、肺の中が重苦しくなる気がするし、ざわついた気持ちになるし。けれど、そんなのは、私だけなのだ、と先輩を見ていると無理矢理にでも自覚をさせられ、私は先輩が気がつく前に、その場を離れる。
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