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「か」
「ん?」
「可愛く」
「可愛く?」
じり、と先輩が近づいてくる。
後ろに下がる場所なんて、いくらでもあるのに、離れたくても、離れられない。
「可愛く、ない」
「もう一回」
「…可愛くない!」
バッ、と先輩の手を振り払い、その勢いのまま横を向きながら言えば「そうだな」と先輩が優しい声で答える。
「可愛いのは、俺じゃなくて」
「んぐ」
むぎゅ、と両頬が、先輩の手に挟まれる。
「みゆきちのほうが可愛いんだけど」
ニカッ、と笑う笑顔は、可愛いよりも、格好良くて。
ぶあっ、と頬に熱が一気に集まってくる。
「まぁ、でもその可愛さは」
他には、見せないけどな、と笑った先輩の顔は、やっぱり、格好良い。
先輩は可愛い。
これは、皆が知ってること。
けれど、やっぱり。
先輩は、可愛いよりも、格好良い。
だって、そうでなければ、私の心臓はこんなにも煩く、騒ぐはずがないのだ。
「先輩」
「ん?」
「やっぱり、先輩は、格好良いです」
そう伝えた私に、「今さら気づいたか」と、先輩は嬉しそうに、笑った。
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