古い邦画のような口説き文句で君を誘いたいのだ

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 そう言って渡された一枚の名刺が、いま私の手の中にある。社名の載った良くあるそれを裏返せば、小さな右上がりの文字で、彼の電話番号が書かれている。  馬鹿みたいな話だ。ただ騙されているだけかもしれない。彼が悪人であってもおかしくない。  だけども、何故だろう。これを捨てる気になれないのだ。  もうじき25時になる。5コールだけ、そう、5コールだけ掛けてみて、もしも彼が出たのなら。その時は、彼の言う「愛」というものに、私を託してみようと思う。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加