指切りげんまん

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指切りげんまん

 ぼくがまだ小学生だったころ。夏休みになるとよく祖父の家に遊びに行っていた。両親が共働きで忙しかったから学校のない夏休みの間だけ面倒を見てくれていたのだ。  祖父の家は田舎にあって、ゲームセンターもカラオケも、コンビニだってない。電車も一時間に二本だけで、バスに至っては二時間に一本。最初は嫌だった。家にいたってゲームもないし、クーラーもないからうだるような暑さが一日中襲ってくる。扇風機の前でも吹いてくる風は生暖かいから余計暑く感じてしまう。その上、外からは信じられないぐらいの大音量でセミの声が否応なしにぼくの耳に流れ込んでくる。これなら一人で自分の家にいた方がましだったかもしれない。何度もそう思った。でも、そうしなかったのは祖父がぼくのことを思っていろいろと良くしてくれているとわかっていたからだ。川で冷やしたサッカーボールよりも大きなスイカを食べさせてくれたり、川に釣りをしにも連れてってくれた。晩御飯だってぼくが好きなお肉をいつも出してくれた。何より一番嬉しかったのは、祖父がぼくの話し相手になってくれたことだった。そんな日々が続いていき、少しずつ祖父の家での生活に慣れ、十日が過ぎるころには、嫌だとは思わなくなっていた。
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