1人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは十四で、女学院の二年生だった。
学徒動員で、わたしはその工場で飛行機のナットの水洗いを級友たちとしていた。
「見て見て、グラマン飛んでくよー」
「光ってるね」
都心に飛んでいく飛行機を見て、友だちと歓声をあげたこともある。
武蔵野村には、グラマンは飛んでこない。
無邪気に、みなそう思っていた。
「しっ!憲兵が見てるぞ」
ヒロシは、二つ年上で、飛行学校の学生だった。
戦局が悪化して、物資がなくなると、訓練飛行機もなくなってしまった。
そこで工場に飛行機を作りにやってきたのだった。
「……これやる」
ヒロシはよく豆やお芋をくれた。
「いくらでもやる。おれ、目がいいから」
ヒロシは目がよくて、上の人の目をかすめては上手に物を盗った。
ちょっと怖かったけど、お腹をすかしていたので嬉しかった。
「ありがと……」
わたしはそれがヒロシの恋心であることを知っていたと思う。
そしてあの日、1940年の11月24日がやってきた。
寒い日だった。
最初のコメントを投稿しよう!