第三夜

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(なるほど) 『イズミ、また会おう、桜の樹の下で』 空襲で粉々になった瓦礫の下で、ヒロシはわたしの手を握ってそう言った。 グラマン戦闘機の焼夷弾は、工場を大きく斜めに分断した。 わたしはいつも通り一階で、友だちとボルトの洗浄をしていた。 轟音とともに、天井は砕け飛び、まわりは炎につつまれた。 『キャアアア……!』 『うううっ……助け……て…助けて……』 悲鳴とうめき声。 気づくと、床に倒れていた。お腹が熱くて、つぎに寒くなった。 もうもうとあがる土埃。 なにも見えない。 『イズミッ!!イズミッ!!』 ヒロシはわたしを見つけた。 ほんとうに飛行機乗りの目なんだな……と思った。 『みんな地下に逃げろーーーッッ!!!はやくーーーッッ!!!またくるぞーーーー!!!』 先生が必死に怒鳴っている。 ヒロシは嗚咽しながら、わたしの手を握っている。 逃げて、と言ったつもりだった。 ほんとうに声がでたかどうかは覚えてない。 『桜が満開のころ、迎えにきてくれ。また会おう』 『かならず……かならずだ』 震える声を、ようやく思い出した。
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