第一夜

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「ママは来ないよ」 ふいに、うつむいた女の子の首が痣だらけなことに気づいた。 青い痣、紫色の痣、時間がたって茶褐色になった痣……。 髪はボサボサで、鼻はとがるほど痩せている。 「ママは嘘のパパといるから。これから、ほんとのパパがアリサを迎えにきてくれるんだよ」 繋いだ手が、ぬるぬるする。 「アリサは、ここでまつの」 ふっ、と20メートル先の街灯が消えた。 誰が、歩いてくる。 「ぎっこん、ばったん」 女の子は前後に揺れながら、黄色い歯をむき出して喜んでいる。 「ぎっこん、ばったん。ぎっこんばったん……」 わたしは手をふりほどいて逃げ出した。
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