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第三夜
(……ヒロシと約束しなければなぁ)
ため息がでた。
いつから、霊感体質になったのか。それとも、幻覚を見るようになったのか。
(また、なにかあったらどうしよう)
そう思いながら、またにぎやかな人波に流されている。
唯一の救いは、今日は時間がはやくて日没まえということだ。
「あ」
ひらり、と桜の花びらが落ちてくる。
桜は、とうとう満開だ。
「積乱雲みたいですねえ」
横を歩く、品のいいおばあさんが話しかけてきた。
「ほんとうに夏の雲みたいですね」
ふたりで笑いあう。
「どちらからいらしたんですか?」
「隣の杉並区からですよ。三年まえに引っ越したの。そのまえは、ずっとこちらに住んでいたのよ」
「桜祭りを見に?」
「いいえ、友だちを迎えにきたの。でもどうも待っている場所がはっきりしないんもんだから、こうやってゆっくり歩いていこうかしらって……」
おばあさんは、にこにこといった。
「しばらく、ごいっしょしてもいいかしら?」
「もちろん!」
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