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私も偉大な魔法使い達が見ている光景を見たい。魔法使い達が奏でる魔法を、私も使いたい。
その思いだけで「桜の木の下で。」に名乗りをあげた次第である。
桜は始まりの花。
桜は終わりの花。
桜は宴
桜は…
様々な考察を紙に鉛筆で殴り書きする。
「桜の木の下で」どころか、桜に対するイメージさえふわふわとして固まらない。
どんな考察を書いて、みても、しっくり来ない。
こんな話ではつまらないんじゃないか。
こんな話では在り来たりではないか。
そんな想いばかりが鉛筆の走りを鈍らせる。
その苦悩すら、まるで自分が偉大な魔法使いになったようで新鮮で、楽しい。
誰かが書きたいと思ったものではなくて、自分が書きたいと思ったものを書きたい。
「桜の木の下で」は私にとって初めての執筆なのだから、産声のように高らかでありたい。
偉大な魔法使いになれるか否かは別として、魔法使いになろうとするのは自由である。
私が、魔法使いになるための記念すべき第一歩。
初めの魔法が、「桜の木の下で」になるのである。
私は意を決して鉛筆を握る。
真っ白な紙を一枚取り出して、一番上に大きな字で私が魔法使いになるための呪文を走り書きした。魔法使いが杖を振るうような軽やかさで。
どんな魔法かは、使ってみなくてはわからない。花が咲くのか、空が飛べるのか。全くわからないが、どちらにしよこの踊る気持ちは本物である。
私は白い紙の上に生き生きと踊る魔法の呪文を満足げに眺める。
まだそれだけで、肝心な中身は何一つ編んでいないというのに、まるでこれから遠足にでも出掛けるような、ふわふわとした心持ちだ。
私の初めの魔法は、空を飛べる魔法なのかもしれない。
私は大空を羽ばたくような晴れやかさを胸に咲かせながら、まるで踊るように紙面で今にも踊り出しそうな文字をなぞる。
ここに今小さな、魔法使いが産声をあげた。
その魔法使いが細々と、力強く、控えめに、声高々に魔法を叫ぶ。
或「桜の木の下で。」
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