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唾を飲み込んで、息を整えてから、短く答える。
「俺は祖父さんか、祖父さんの愛人だと思うんだよね。もしかしたら、二人とも埋まってるかもな」
拓実の軽口を否定する気にはならなかった。
拓実の父親が生まれてすぐに祖父は失踪した。愛人とともに町を出て行ったと言われているが、実際はどうなのか。祖父は分家筋で、出身もこの町だ。両親もこの町に残っていたのに、それきり。誰も行方を知らない。
代々受け継がれてきた老舗旅館を祖母は一人で守りながら、祖父が置いていった義理の両親のことも最期まで看取った。
出来た人。それが周囲の祖母への評価だ。
でも、もし私が祖母に似ているのなら。それが本当に正しい評価なのか疑わしい。
理由は、嫉妬ではないだろう。矜持。でも自分一人分では、行動を起こすほどの重みにはならない。
「なぁ、聞いてるのかよ!」
拓実に肩を揺さ振られ、ゆっくりと顔をあげる。
「黙ってるの、やめろよ。怖いだろ!」
「怖いって……」
涙目で訴える拓実の子供のような表情にため息をつく。
「だって、ほら! 映画とかでよくあるだろ。土の中から急に腐った手とかが出てきて、ガシッ! と、足首を捕まれたりとか!」
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