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また桜が満開になる季節になった
私はある年のこの季節に大切な人を失った
そう、私の前から消えてしまったのだ
それ以来この季節はあまり好きではない
切なくなるからだ
その切なさを誤魔化すために友人たちと花見にきた
見頃のときにきたので桜は満開でとても綺麗だった
そして、私は見つけてしまった
そう、あの日失ってしまった大切な人を
けれど、勇気がなくて話しかけることができなかった
それからというものいつもあの人を思い出してしまう
あの人が消えてしまってから心はぽっかり穴が空いたように静かに暮らしていた そしてそんな私を理解してくれる人がいた
けれど、あの人を見つけてしまってからは頭のなかはあの人でいっぱいになり、私を理解してくれた人に正直に話すと少し悲しそうな顔ででも嬉しそうな顔でよかったねと言ってくれた
そんな優しさに私は泣いてしまった
そして桜が少し散り、少しだけ葉っぱになってきた頃またあの人を見つけた桜の木の下にきた
すると、なんとまたあの人がいた
勇気をもって話しかけてみた
「ね、ねぇ。優良…だよね?」
そう話しかけると優良は私に気付いていたかったのか驚いたように目を見開き勢いよく私の方を見た
「えっ 佳奈?」
「うん。そうだよ 久しぶり」
「久しぶり、ここで会うと思わなかった」
「私前も優良がここにいるの見たよ」
「マジで?俺は気付かなかったな」
「ねぇ、なんで5年前いきなり私の前から消えたの?」
優良はあーっと若干困りながらも話そうとしていた
「実は5年前に母親が亡くなってそれで父親の方に強制的に連れていかれて急だったから連絡できなかった。ごめん」
「落ち着いてからでも連絡してくれればよかったのに」
「うん。そうだよな。ほんとごめん 忘れはしなかったんだけど自分のことでいっぱいいっぱいで思い付かなかったんだ」
「そっか。それでなんで戻ってきたの?」
「あーそれはそろそろ一人暮らししようかと思って 一人で住むなら佳奈がいたこの町にしようと思ってさ」
「ありがとう 話してくれて」
「あのさ、佳奈。俺さ今でもお前のこと好きなんだ。向こうに行ってたときも気持ちは変わらなかった いきなり消えてお前はもう気持ちないかもしれないけど俺はまだ好きだから…」
「私だって優良がいなくなってから辛くてでも好きで諦められなくて…」
「佳奈…」
優良は優しく佳奈を抱き締めそっと唇に触れた
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