第二章 罰

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ふと女の足元を見遣った。白いスニィカァに、飛沫のように乱れ飛んだ栗色。早春の恋は夏を飛び越え、秋の訪れを予感させる。 止まっていた時間が動き出す。私は立ち上がり、桜の木に背を向けて歩き出した。今日もありがとう。もし運命がそれを赦すなら明日また。今日はただ、振り返らず、往く。茂みの影まで歩いて抜ける。背中に刺すような異種の視線、恥じらいとばつの悪さはやがて明確な敵意へと収斂する。やれやれ、今宵は土砂降りだ。見届けよ。山間のオリンピックを。 私は体が追い付かぬほどに足を繰り出し繰り出し、まとわりつく春の陽気を掻き混ぜる。公園を飛び出す。近所のおばちゃん。子供たち。おじちゃんおはよう。はいおはよう。ひんやりとした朝の空気が心地良い。
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