桜のシャーベット

さくら、さくら。
どうして日本人は、桜の季節になると騒ぐのだろう。
さくら、さくら。
私はただ静かに眺めていたいのに。

電車のドアが閉まった。
４月。
今日から私は大学２年生になる。

電車は１０分ほど進むと、トンネルに入っていく。山を越えていくのだ。電車から見える、渓谷の美しさは格別だ。
トンネルを出ると、突然明るくなった。ただ明るいだけではない。ふわっと明るいのだ。ピンク色の祝福。電車の左右どちらの窓からも、たくさんの桜が咲いているのが見える。まるでさくらのトンネルだ。
ピンク色の中で電車は停車した。春うらら。春の歓び。そんな空気が車内に入って来たような気がした。もう少し眺めていたいけど、電車はお構いなしに、次の駅へと向かっていく。