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今日の大学の講義は午前中の2コマだけで、終わったら、竹内洋平とお昼ごはんを食べることになっている。竹内洋平は、同じ高校の同級生で、大学では違う学部であるが、行き帰りの電車が同じになることが多い。竹内洋平は、あの山の中の桜を見ていない。山桜を通り過ぎて2つ目の駅から乗ってくるから。
大学に着くと、いつもより人がいっぱいいるように感じた。たぶん新入生だろう。校舎になかなか入らず、集まってしゃべっている。
「おっはよう。」
背後からだけど、声でわかる。えりちゃんだ。今日のバッグはセリーヌ。えりちゃんはブランドバッグが大好きで、アルバイト代のほとんどをバッグに注ぎ込んでいる。
「おはよう。」
「ねえ、1コマ目の授業は何?」
「1コマ目?社会学。」
「あっ、私も~。よかったぁ~。」
えりちゃんは朝からテンションが高い。今日は2コマともえりちゃんと過ごすことになりそうだ。2コマ目は必修科目の英語だから。
英語の授業が終わると、えりちゃんは「バイトがあるから。」とそそくさと帰って行った。えりちゃんは中国語通訳のアルバイトをしている。お母さんが中国出身で、バイリンガルなのだ。通訳ってそんなに儲かるんだなあ。えりちゃんのブランドバッグを思い出しながら、私は「おつかれ」と見送った。
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