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待ち合わせ場所の図書館前広場に行くと、竹内洋平はすでに待っていた。桜の花びらが舞っている。風に舞う花びらに気を取られていると、竹内洋平はこちらに気付いたようだ。
「おつかれ。」
「おつかれ。」と私も応える。
「今日の授業、これで終わりって言ってたよね。」
竹内洋平が聞いた。
「うん。なんで?」
「いや?別に。じゃあ、行こう。」
そう言って、竹内洋平は自転車置き場へと進んでいった。
「自転車、あるの?」
「うん、友達の借りてるだけ。」
そう言って、竹内洋平はかばんから何かを取り出した。
「私、自転車ないけど。歩いて行ける距離?」
竹内洋平は自転車の後輪に何か細工している。
「歩きで行けないことはないけど、自転車の方がいいと思って。後ろに乗ればいい。」
「えっ?後ろ?そんなの無理だよ。」
私は自転車の後ろに立ち乗りなんかしたことがない。高所恐怖症だし、運動神経も悪いから、立ち乗りなんて絶対に無理だ。
「いけるよ。ほら、カバン貸して。」
そう言って、私のバッグを自転車の前のカゴに入れた。
「ほら、そこに足を置いて、肩につかまったらいいから。」
先ほど、後輪に何か細工をしていたのは、このためだったのか。私はようやく理解した。太い釘みたいな部品の上に足を置き、竹内洋平の肩に手を乗せて、思い切って立ってみた。なんとか乗れた。
「乗れるじゃん。じゃあ、行くよ。」
自転車が動き出す。
「こわい、こわい。あ~。」
竹内洋平の肩に必死につかまりながら、私は叫んだ。それでも自転車は進む。
「あ~、速すぎ。無理~。降ろして~。」
私があまりにも叫ぶので、竹内洋平は自転車を止めた。
「まだ校門も出てないんだけど?」
「だって、怖いもん。立ち乗りしたことないし。逆だったらいけるかも。」
そう言って私は自転車のハンドルを持つ。
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