桜のシャーベット

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「えっ?俺が後ろ?危ないよ。」 「いいから乗って。」 竹内洋平が後ろに立って乗った。私の肩に重みが加わる。 「重い。」 文句を言いながら、進もうとしたが、ものすごく不安定だ。ぐらつきながら進む自転車。 「やっぱり危ないから、歩いていこう。自転車戻してくるから待ってて。」 私は黙って自転車を降りた。竹内洋平は自転車を戻しに行った。 ああ、なんか疲れた。はじめから歩けばよかったのに。私は少しイライラしていた。 「じゃあ、いこうか。」 戻って来た竹内洋平は私のイラつきには気付かず、あいかわらずマイペースだ。 校門を出て、駅方面に向かった。 「駅の方?」私は聞いた。 「うん、駅の裏側の方。裏の方って、あまり行かないけど、結構いろいろ店があるらしいよ。」 「ふうん、そうなんだ。私、学食とスリランカしか行かないからなあ。」 スリランカとは、校門前にある英国風喫茶店のことで、学生よりも地元のマダムでにぎわっている店だ。私はスリランカでケーキセットを食べることが多かった。 「スリランカ?俺行ったことないなあ。なんとなく、入れない。男は入ってはいけない空気が漂ってる。」 「そんなことないよ。哲学の大西先生は、たまにスリランカで紅茶飲みながら講義するよ。まあ、大西先生以外は全員女子だけど。」 「てか、それって授業?その先生、女子に囲まれたいだけじゃない?」 「まあ、先生といっしょに紅茶飲んで、おしゃべりしたら単位もらえるんだから、楽な授業よ。飲食代も先生が出してくれるし。」 そんなことを言いながら歩いていると、駅の裏側に出た。駅は毎日利用しているけれど、駅の裏側に来たのは初めてだった。のどかな雰囲気がする。緑豊かな中をしばらく歩いていると、竹内洋平がうれしそうに言った。 「あ、あそこ。あのフランスの国旗がある店。」 3色の旗が風になびいている。 「あ、ほんとだ。フランスの旗だ。お店、思ったより近かったね。自転車乗るほどでもなかったよ。」 竹内洋平は黙っていた。
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