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赤いギンガムチェックのテーブルクロスが窓越しに見える。可愛らしい感じの店だ。「カジュアルフレンチ田ぶち」というのがその店の名前だった。席に案内され、メニューを選ぶ。二人ともデザートつきBコースを注文した。飲み物は私がアメリカン、竹内洋平は紅茶をストレートで注文した。
私は、飲食店でメニューを選ぶのに時間がかかる人が苦手だ。どうして迷うのか分からない。自分が今欲しているものを選べばいいだけなのに。直感に従えばいいのに。竹内洋平は迷わない。すぐに決められる人だ。私は彼のそういうところが好きだった。
食事が終わり、デザートが出てきた。
「本日のデザート、桜のシャーベットでございます。」
さくら。
その瞬間、私の頭の中でふわりと桜の花びらが舞った。
さくら、さくら。
なんだか、どきっとした。
ほんのりピンクがかった桜のシャーベットは上品な甘さがした。桜の花びらの塩漬けが入っているので、少ししょっぱさも感じた。
私は、今朝、桜のトンネルを抜けてきたことを思い出していた。竹内洋平にもあの桜を見せたい。
「あー美味しかった。」
竹内洋平はシャーベットを食べ終わったようだ。
私は急いでシャーベットを口に入れた。
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