桜のシャーベット

6/9
前へ
/9ページ
次へ
赤いギンガムチェックのテーブルクロスが窓越しに見える。可愛らしい感じの店だ。「カジュアルフレンチ田ぶち」というのがその店の名前だった。席に案内され、メニューを選ぶ。二人ともデザートつきBコースを注文した。飲み物は私がアメリカン、竹内洋平は紅茶をストレートで注文した。 私は、飲食店でメニューを選ぶのに時間がかかる人が苦手だ。どうして迷うのか分からない。自分が今欲しているものを選べばいいだけなのに。直感に従えばいいのに。竹内洋平は迷わない。すぐに決められる人だ。私は彼のそういうところが好きだった。 食事が終わり、デザートが出てきた。 「本日のデザート、桜のシャーベットでございます。」 さくら。 その瞬間、私の頭の中でふわりと桜の花びらが舞った。 さくら、さくら。 なんだか、どきっとした。 ほんのりピンクがかった桜のシャーベットは上品な甘さがした。桜の花びらの塩漬けが入っているので、少ししょっぱさも感じた。 私は、今朝、桜のトンネルを抜けてきたことを思い出していた。竹内洋平にもあの桜を見せたい。 「あー美味しかった。」 竹内洋平はシャーベットを食べ終わったようだ。 私は急いでシャーベットを口に入れた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加