9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
その日いつも通り、ぼーっとしていた。
東部線のちょうど半分いったくらいの時だった。
一点を見るのに飽き、少し目線を動かしてみると、ふと人混みの向かい側で座っている女の子がこちらを見ていることに気づいた。
なぜか、私たちの目線の間に人が立っていなかった。
ショートカットの女の子。その子は真顔だった。ずっと、私のことを見ていた。
奇妙に思い、目を逸らす。逸らして、でも気になってもう一度見ると、まだその子は私のことを見ていた。
大きな瞳だった。なぜかその瞳に私の視線も惹きつけられた。
(綺麗な顔…)
そんなことを思った。
私たちはしばらく見つめ合っていた。
次の駅に到着すると、向かい側の彼女は人で見えなくなった。
そして、私が下車するまで、彼女が見えることはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!