わたしのいろ

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 例えば、今足元で咲いているタンポポは去年わたしに引っかかった綿毛が育った子。気持ち良い風に乗れたと思ったら突然風が強くなって枝に叩きつけられちゃったちょっと不運な子。でも花を咲かせるまでに育ったのは、大きくなれるように一生懸命根を伸ばしたからね。  太陽が高いころよく現れるのは、この辺りを縄張りにしている茶色のトラ猫。気まぐれにベンチの上で丸くなり、日が落ちてくるとわたしで爪を研いでどこかへ去っていく。元々は野良猫だったのだけど、最近人に拾われたみたい。飼い主がよくご飯を忘れてしまうから、ちゃんと帰って催促しないといけないって不満そうな顔をしていたけれど、つやつやになった毛並みは愛されてる証拠。そして帰りの軽い足取りは愛している証拠。わたしには何も関係がないのに、飼い主になった人へ教えてあげたくてちょっとヤキモキしちゃうわ。わたしは話せないのだけどね。  夕方になると毎日来るのは、若い女の子と真っ白でふわふわした犬。『お散歩コース』なんだそう。いつも公園中ぐるりと匂いを嗅いで回って、来た道とは違う方向に行く。白犬はいつも美味しそうなものを探して地面に夢中。そうそう、この間はタンポポが食べられそうになってたわね。怒られて止めたけれど。でも華奢な女の子はわたしをよく見てくれるの。花を咲かせていなくても、必ずじっと見つめてくれるのよ。  小さな鳥は暖かいときが多いかしら。最初わたしの所に来たころは二羽だったのに、今は数えきれないくらい増えちゃったわね。わたしの花の蜜は美味しいんですって。最近は催促しにくる子までいるのよ。でも咲かせたそばから吸い尽くされるのは困りものね。  まだまだあるわ。ここに居る年月は伊達じゃないの。
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