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数回まばたきをして一度ぎゅっと瞼を閉じてから、りんごは自分を覗きこむ二つの顔を確認した。
「亜樹……ゆきな…ちゃん…わたし…」
蛍光灯の白い光が眩しい。天井に手をかざして、しばらく目を見開いたまま指先を曲げたり伸ばしたりしてみた。
身体がちゃんとここに在ることと、左手の柘榴石の指環の重みで先程までのやり取りが夢ではなかった事を確認した。
その手をゆきながぎゅっと両の手のひらで包み握りしめた。
「ごめんねりんごちゃん、ごめんね…!」
「ゆきなちゃん…」
ゆきなは右頬と肘に大きな絆創膏をしていた。どうやら"ちゃんと"助けることができたみたいだった。
「よかった、よかったよぉ……二人とも死んじゃうんじゃないかって、アタシ本気でそう思ったんだから…!」
今にも泣き出しそうな亜樹も、まだ不安顔のゆきなも、少し目元を赤く腫らしている。きっと沢山泣いてくれたんだなとりんごには想像ができた。
「亜樹…ありがと…。……ここは…?」
ぐるりと視線だけであたりを観察するが、白いカーテンで間仕切りされていてその向こうの様子はわからない。
「ここは帝立病院の病室だよ。目を覚ましたね夜野さん、よかった。」
りんごの問いに応えたのは友人二人のどちらでもない、カーテンの隙間から滑り込んでくる男の声だった。
「あっ、先生…!」
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