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「先生!りんご、…大丈夫ですか?」
先生と呼ばれた男はゆっくりとした動きで手近なパイプ椅子に腰掛けた。白衣姿で、胸の名札には《タカナシ》と表記されている。どれどれー、と、りんごの様子を観察して、頭を二回たてにふった。
「意識もしっかりしているみたいだし大丈夫だろう。夜野さん、親御さんにはもう連絡してあるからね。もう少し落ち着いたら念のためもう一度検査をしよう。とりあえず今日のところは入院してもらうよ。」
「そう…ですか、…わかりました。ありがとうございます。」
それからのタカナシ医師の説明によると、ホームから電車が滑り込んでくる線路へ転落しかけたゆきなの腕を咄嗟にりんごが掴んで引っ張り助けたという。その際に二人ともホーム上で転倒し、ゆきなをかばったりんごは下敷きになって頭を打ったまま気を失ったそうだ。救急車で緊急搬送され意識のないまま検査を受け、暫く死んだように眠っていたという。
ゆきなにぶつかったあの中年男性は猛省しているとのことで、その行為に悪意はなく、一先ずは示談の方向で話が進んでいるとの事だった。
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