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「いらっしゃいませ!」
元気よく声を張り上げた。
わたしの名前は、織原香織。
服飾関係の専門学校に通う十九才。
今は、アルバイト先のカレーショップで、労働の真っ最中だ。
このバイトは、高校の時から始めて二年になる。
店では、店長の次に長かった。もう、新人の子に指導する立場だ。
店でのあだ名は、『計量先輩』
店長にまでこう呼ばれる。
あだ名の由来は、カレーの皿に盛るご飯をいつも一回で決めるからだ。
ーカランコロンー
また来店だ。
「いらっしゃいませ」
入って来たのは、若いカップルだった。わたしは、二人の内の男の方に見覚えがあった。
『亮太?』水を出したときに間近で見て、わたしは、相手の正体を確信した。
彼女を連れて来店したのは、幼なじみの亮太だった。ヤツは、わたしに気付いていないらしい。
『なかなか可愛い彼女じゃない。まっ、わたしには劣るけど』
そう言えば、亮太のヤツと逢うのは、小学生以来だ。
最後に会ったのは、田舎の婆ちゃん家だ。
こいつ、ちっとも変わってない。柿の実を取るために、ヤツに肩車をさせたりしたっけ。
そんな事を考えていると、亮太のヤツはオーダーが決まったらしく、わたしを呼んでいる。『生意気な!』
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