第1章

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あれから、12年の月日が流れていた。 あの日から会うこともなかった12年… あき枝は30才になっていた。 12年という月日は色々なものを変えただろう。色々な事が変わっただろう。 だけど、変わらなかったもの、確かなものがあき枝の心の中にいつもあった。ずっとあった。 離れても、何年、何十年たっても変わらなかったその想い。 その想いは、私をどんな時も支えてくれた。 私が強くいられたのはその想いがあったから。 あなたへの想いがあったから… 明日は約束の日。 何も望んでいない、願ってもいない。 あなたが約束を覚えているとかいないとか、今の私には関係なくて。 私にとって大切な事は、今も変わらずあなたを想っているということ。あの日の約束があったから、今日まで真っ直ぐに歩んでこれた気がする。 あなたへの想いを誇りに思う。 これ程までも想える人に出逢えたということを誇りに思うから。 これから先、もしかしたら他に想える人との出逢いがあるかもしれないけれど、 今までの、そしてこれからの私を改めて見つめる為に、明日行こう。 あの桜の木の下へ。 約束の日、あき枝はあの場所へと出かけた。
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