第1章~着信

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どれくらい車を走らせ続けたのだろうか。 雨はあがり、動揺のあまりカーエアコンを入れなかった彼の体からにじむ汗が、夏の訪れを告げていた。 いつもなら助手席でまどろんでいるはずのマリコが乗ることはないのかもしれない。 赤信号で停車するたびに川越街道に連なるテールランプが曇ったフロントガラスと交錯し、このまま目を閉じれば助手席からヴァージニアスリムの紫煙に流れてマリコの笑い声が聴こえてきそうな気がする。
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