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君には分からないよ
「いたっ」
紙って意外と切れる。スーっと引いた指に、ぷっくりと血が滲んできた。
「どうしたの」
「…ああ、アニ。ちょっと、救急箱とってきて」
「ん。怪我したの?」
アニが僕の指に顔をよせてくる。男型のアニは、他の男型より色白で、まつげが長くて、よく女型に間違われる。
「あかいね…、これはなに?」
「血、だよ。そっか、アニには流れていないんだ」
「なにが?ち…ってやつが?……君には流れているの?」
「そうだよ」
不思議そうに血を眺めるアニ。早く救急箱とってきてほしいんだけどな。
そんなに眺められると、なんだか妙な気分だ。
「においは…あんまりしないね…」
アニは先ほどよりも更に顔を近づける。ふんふん、と鼻のなる音。
「ねぇ、アニ、早くきゅうきゅ…っ!?」
べろり、と。
僕の指に舌を這わせ、アニが血を舐めた。
アニに体温はない。ひんやりとしたアニの舌。ぞくり、と肌が粟立つ。
「ん…、変な味」
「ちょ…アニっ、やめてよ、ビックリするだろ」
「……ごめん」
なにかを考えた後、アニはそう言った。不服そうに寄せられた眉間のしわ。人間にしか見えないけれど、こいつには、やはり血は通っていない。
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