0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
僕は、顔に血が集まっていることを自覚しながら、「救急箱」と短く命じた。アニは、今度は黙って命令に従った。
「ありがと」
「ん」
絆創膏をとりだし、傷口に貼る。その様子を、ただジッと見続けるアニ。
「よし」
既に、絆創膏には血が滲んでいた。
不意に、アニが僕の指を手にとる。
「……!」
アニは、絆創膏の上から、僕の指を、
な、舐めた。
「あ、アニ、なに、して」
「君にしかない、この、赤いの、僕にも欲しいな……もっと教えて、これ、何でできているの?」
「し、知らな……アニ、には、無理だよ……だって、君は」
伏せられていたアニの瞳が僕を見る。
どきりとした。
目を合わせたのは、久しぶりだったから。
薄いグレーの瞳に吸い込まれた。虹彩が輝いて、瞳孔には僕がうつっている。
君は、アニは、一体、なにを見ているの?
「だって、……僕はなに?」
「だ……だって……」
僕は憚られた。なんだか怖くて。
湿ってもいない、熱くもない、アニの舌が、僕の指を這っている。
は、と息を吐き出した。
顔が熱い。
なんだこの、感覚は。ただ、無機物が僕の指に触れているだけだというのに、視界から、「舐められている」という情報を受け取ってしまう。
「や、やめてよ、アニ」
「どうして。君、さっきから変だよ。怪我したから?」
「……ぁ、ああ、そうだよ。だから、どいて」
最初のコメントを投稿しよう!