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あれ、この前の。
あれから数日後のことだ。
お昼休みもそろそろ終わりという時間に、人気のない廊下であいつを見かけた。
あのうるさい集団の真ん中にいたちっこいやつだ。
名前…何だっけ。やっぱり思い出せない。
今日は一人なんだ。というか笑ってないな。そりゃそうか。
一人で笑いながら歩いてたら怖いしなぁ。
…もうすぐ授業始まるのに一体どこいくんだろう。
ほんの出来心だった。
初めて見たあの無表情が何となく気になって、気づかれないように彼のあとを尾けていった。
やって来たのは校舎の端にある非常階段の踊り場。
普段全く使われないというわけではないが、授業がもうすぐ始まるこの時間は基本的に誰もいない。
こんなところで一体何をするんだろう。
サボりかな?でも授業は真面目に出てるよな、多分。
彼に気づかれないようにそっと様子を窺う。すると彼はふぅっと深呼吸をして、突然何やら早口で喋り出した。
え、何あれ独り言?うわぁ…イタイ。
正直、引いた。
誰もいないところで一人ぶつぶつ呟くその姿は、ちょっと、いやかなり異様だった。
とは言え決して大声で叫んでいる訳でもなく、彼の声は耳をすませば俺のところでも何を言っているかギリギリ聞き取れるほどのものだった。
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