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「…ったくあいつら本当調子乗りすぎだろ!ざけんなよっ!」
何だ、もしかして誰かの悪口か?
「大体俺のこと優しい優しい言うけど結局押しに弱いって言いたいんだろ!絶対分かっててそういうところ利用してくるじゃんか。何なんだ本当いい加減にしろよな!」
へぇ、そんなこと思ってたんだ。クラスの人気者でもやっぱそういうもんなのかな。良い人演じるのも大変だなぁ。
まぁどうでもいいけどね。
授業の準備しなきゃだしそろそろ教室に戻ろうかな、と思い始めた頃だ。
「……だ。」
ん?
一通り捲し立てた後、彼が最後に呟いた言葉に俺は一瞬呼吸を忘れた。
「一番最低なのは、俺だ。自分なんか、嫌いだ」
注意していなければ聞き逃してしまいそうな頼りない声だったが、確かに彼はそう言った。
同じ、だ。
彼も俺と同じ。
だけど全く違う。
俺はただ与えられる時間で溜まり行く重さを「疲れ」と称し、それを特に誰のせいにもしていないけれど、同時に改善する努力もしていない。
一方で彼は、その重さと真正面から向き合っている。
日々の生活で積み重なる重さの正体は分からないけれど、少なくとも彼は何とかしようともがいている。
その重さを自分のせいにしては、健気にも全て背負い込もうとしているのだ。
時には他人の分までも。
はっきり言ってばかだ。くだらない。
そんなに難しく考えずにもっと人のせいにしてしまえばいいのに。本当にばかだ。
…ばかだなぁ。
俺と彼は根本的に同じで、だけど決定的に違う気がした。
あの時感じた笑顔のぎこちなさは、やっぱり間違いじゃなかったんだな。
…もっと。もっと違う顔を、見てみたい。
それから俺は、秀から目が離せなくなった。
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