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「それではすいません、早速調べさせて戴きます」 越前屋は何食わぬ顔に優しい微笑みを浮かべながら、手に白い手袋をはめて家宅捜索に入った。 しばらくして、今日、塚原がD高原に担いで行った、わりと大きめのリュックサックを越前屋は手にした。 リュックの中身を見る。 そして中から折りたたまれたミニテントを出した。 すると越前屋は、ミニテントを、手に持っているスマートフォンで撮影した。 さっきから家の中の物品を触っては、それをスマホで撮影している。 「ははあ、これがアリバイ工作に使われたテントですか。あ、ちょっと土が付いてますな。この土、わざわざあなたがお付けになられた?」 「は、はあ。も、申し訳ありませんです」 「なるほど。やりますなあ、ハハハ」 その後はリュックの外にある小さなポケットに手を伸ばした。 「あ、これは、ハンカチですな」 「ハイ」 越前屋がポケットから出して来たのは、今日、塚原が高原に行った時に拾ったグリーンのタータンチェックのハンカチだった。 「これ、あなたのものですか?」 「ハ、ハイ」 このハンカチで登山中、汗を拭ったから、今では自分のハンカチということでもいいだろう。 「そうですか」     
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