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「どなたですか?」 塚原は、自宅マンションのドアの向こう側の男を見て、チンドン屋かコスプレイベントの告知か何かかと思った。 しかしチンドン屋やコスプレイベントが、家を回って告知なんかするか?ともすぐに思い直した。 「夜分遅くに申し訳ありません。警察の者ですが、こちら、塚原潤一さんのお宅でよろしかったですか?」 男はそう言いながら、パスケース状の縦に開く二つ折りの警察手帳を見せて来た。 中には写真の下に、階級、氏名、職員番号が記載されている。 写真では警官の制服を着ているし、シルクハットも被っていないが、顔は目の前の男と同じだった。 「はい、塚原ですが、何か?」 塚原は正直驚いていた。 警察が来るのが早すぎるからだ。 まさか、あの階段でのことを、目撃していた者でもいて、早々と通報されてしまったのか? 塚原は内心動揺しながら、手帳の記載によれば越前屋という名の、この古風なサーカスの司会者のような風貌の刑事を、平静を装って見つめた。 「あなた、失礼ですが塚原潤一さんご本人様ですか?」 「そうですが?」 「ああ、そうですか!なるほど!」 越前屋はそう言うと、ニヤリと笑っているように見えた。 「はあ…」     
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