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そんなことまで警察が知っているということは、あの公園には自分には見えていないだけで、ほぼ毎朝、俺を目撃している存在がいるということかもしれない。
まあ公共の場所だし、有り得ないことではない。
だが自分にはアリバイがある。
「ええ、まあ、ちゃんと毎日というわけではないですが、朝よくウォーキングをしてるんで、あの公園にも行きますし、その階段は自分のウォーキングコースにしてますんで、よく通りますが、しかし昨日はウォーキングに行けなかったので通っていませんよ」
「ウォーキングに行けなかった、と仰いますと?」
「いえね、前日から山登りに行ってましてね。実はさっき帰って来たばかりなんです。
あっちで一泊して帰って来ましたから、今日はウォーキングに行けなかったんですよ」
「あ、そうなんですか。ちなみにどちらの山に?」
「ここから二つ向こうの県にあるD高原ですよ」
「はあ。では今日の朝には、あの公園の階段には行っていないと?」
「そうですね」
「なるほど、なるほど」
何がなるほどなんだが知らないが、奇妙な刑事だなと塚原は思った。
風貌もそうだが、謎の明るさを湛えた、まさに見た目通りの、古風なサーカスの司会者のような話ぶりも、なんかヘンだ。
階級は警部補らしいが、警察官というよりは正反対の怪盗みたいだなとも思った。
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