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「はい」 「ふーむ、本当はどなたか、あなたがそちらに行かれていたことを証明してくれる人がいるとありがたいんですがね」 越前屋はニヤニヤしながらそう言った。 シルクハットを脱いだ頭は、キチンとオールバックに撫でつけられた古風な紳士のような髪型だったが、まあ何から何まで古風な男だ。 「一緒に行った人はいませんが、現地で人には会いましたよ。土産物屋や喫茶店の店員と話をしましたしね」 「すいません、アリバイをお聞きするなんて失礼をお許しくださいませ。これは職務上、どなたにもお聞きしてることですので」 「構いませんよ。あ、そうだ、切符を見てもらえば、私が昨日から高原へ行っていたことがわかってもらえると思いますよ」 「切符ですか?」 「はい、あ、ちょっとお待ちを」 アリバイはこちらから、しっかり証明してやる。 塚原はそう思いながら、例の青春18切符を出してきて、越前屋の前にあるテーブルの上に並べた。 「ほう、これが何か?」 越前屋は目の前の切符を見ながら目をパチクリさせていたが、 「青春18切符ですな」 とつぶやいた。     
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