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「あの刑事さん、これは一つの仮説と思って聞いて戴きたいんですが」
「はあ、なんでしょう?」
この際だ、真犯人がいるならいるで、捜査は警察に任せればいいのだから、自分の推理をこの越前屋とかいうサーカスの司会者みたいな刑事に話してしまおう、と塚原は思った。
それで事件捜査が進展し、自分の冤罪が晴らせれば、それでいいじゃないか。
「あの、遺体は、真犯人がどこかへ持ち去ってしまったんじゃないですかね?自分の犯行を隠すために」
「いや、それはないはずですが」
「でも完全にそうとは言い切れないんじゃないですかね。犯人は被害者を殺しておいて、別の人間に容疑をおっ被せて、遺体まで隠して偽装したとも考えられると思うんですが」
「何でまた、そんなことを?」
越前屋は興味深々といった様子で、こちらを睨んで、そう聞いてきた。
「そうやって自分は殺人の証拠から、遺体から何かから消してしまって、別の人間に容疑を被せて、自身は逃げ果せるためにですよ」
「はあ…」
越前屋は難しい顔をして考え込んでいた。
今の自分の推理に、越前屋は事件の核心を見たのかもしれない。
「いや、しかし、それはかなり可能性の薄い話ではないかと…」
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