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越前屋はそう返答しながら、このハンカチも同じようにスマホで撮影した。 その後も越前屋は家宅捜索を続行したが、しばらくして、どこかにメールしているようだった。 「あ、どうもありがとうございました。家宅捜索はこれで無事終了です。大変失礼致しました」 越前屋はそう言うと、深々と頭を下げた。 今はシルクハットと黒いマントを取った、古風な紳士服にオールバックという姿だからか、お辞儀をすると、随分と古めかしいジェントルマンに見える。 謎なまでにどこまでも古風な男だ、塚原は思った。 しばらくすると、越前屋のスマホに電話がかかって来た。 「もしもし。ああ、塚本くんですか、うん、うん、はあ、やはりそうか。うん、うん、なるほど、なるほど、うん、そうか、よくわかりました。わざわざ電話で知らせてくれてありがとう。あ、それと、君の真ん中の通称は「金四郎」で良かったよね。え?そんなもん今時いらないって?いや、だって、塚本金四郎 景元ならバッチリ決まるじゃないか。え、うん、うん、まあいいよ、その話はまた後ほどじっくりしようではないか。とりあえず電話ありがとう」 そう言うと越前屋は通話を切った。     
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