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服を脱いでから、塚原は自らの腹部に、ごく小さな擦過傷があるのが気になったが、血は流れておらず、それに痛みもまるで感じなかった。 さしずめ階段で転んだ時に、腹部をぶつけて擦りむいたのだろうと思った。 しかし階段下の男は、遠目から見ても流血しており、これは明らかに自分が殺人の容疑者にされる状況だ、と塚原は悟った。 おまけに男は、かねてから苦々しく思ってきた、いつか殺してやりたいと思っていた相手だ。 塚原は焦っていた。 さあどうする? そうだ、まず、ナイフと血のついた衣服を処分しよう。 ナイフはどこか適当なところに埋めてしまってもいいし、どこか廃棄出来る場所にうまく捨ててしまえばいい。 衣服は燃やしてしまえばいい。 塚原は、そう思い立ち、脱いだ衣服をまずはハサミで細かく切り刻んだ。 そして大き目の灰皿を出してきて、その細かく切り刻まれた布切れに、一つ一つ火を点けて燃やし始めた。 面倒な作業だが、1~2時間もあれば全て焼却出来るだろう。 それまで淡々と作業するしかあるまい。 やがて、細かな布切れ全て、灰色の灰と化し、それらは煙草の灰より他愛ない、柔らかな灰の粉と化していた。     
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