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衣類が綿100%だったので、比較的燃えやすく、紙を燃やしたのと似たような匂いしかしなかった。
塚原は灰皿に溜まった衣類の灰の粉を、キッチンに持っていき、水道の蛇口を捻って少しずつ流した。
これで血のついた衣服は消滅した。
後はナイフだが、これもどこか自分とは全く縁のない場所に捨て去ってしまえば、見つからない可能性が高いだろう。
だが。
自分にはアリバイがない。
これが最大のネックなのだ。
幸い、ウォーキング中に、他の誰にも会わなかった。
今日は朝から体調が優れず、ウォーキングをサボったことにしても、別に不自然ではないだろう。
しかし、こちらが誰にも「会わなかった」と思っているだけで、遠くからウォーキング中の自分を目撃していた存在が全くいないとも限らない。
後で、そんな預かり知らぬ目撃者が発見されたら、アリバイがないだけでなく、ウォーキングをサボったという嘘の証言をしたことから、間違いなく警察は自分をクロだと認識し出すだろう。
やはりアリバイがいる。
確固たるアリバイがあれば、預かり知らぬ目撃者が仮に存在したとしても、それは他人の空似であり、遠くから見ていた目撃者の見間違いだと言い逃れが出来る。
やはりアリバイはいる。
しかし、今更どうやってアリバイを作る?
塚原は思案に暮れた。
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