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ホテルの部屋やテラスから、多くの山々の絶景が見られるので、いつか二人で泊まりたいねと、かって一緒にここへ来た元彼女と話して、共に宿泊したことを、塚原は山道を登りながら思い出していた。
彼女との思い出…
今も胸に燻る、淡い思い出…
そんなものを胸の中で反芻しながら、塚原は山道を登っていった。
しばらくして、塚原は登山コースから外れて、少し離れた場所にはみ出して歩いた。
草木が生えた、まるで空き地のような場所を、塚原は散策するように歩き回った。
空き地の先の崖の近くまで行くと、ここまで登ってきた、その下の景色が見え、中々にいい眺めだった。
崖の近くには、何かの花が咲いていたが、どういう種類の花か、塚原にはわからなかった。
きっと元彼女なら花に詳しいから、質問すれば、あれが何の花なのか教えてくれたろうな…と、塚原はまた、彼女のことを愛おしく思い出していた。
しばらくその空き地を散策し、また正規の山道に戻ろうとした時、ふと足元にハンカチらしき布が落ちていることに塚原は気づいた。
拾い上げてみると、やはりハンカチだった。
グリーンのタータンチェックの綺麗な柄のハンカチで、塚原の好きなタイプのデザインだった。
塚原はそのまま、何気ない様子でそのハンカチを背中のリュックの外ポケットに入れた。
そして、また辺りを散策するように歩き回った後、少し準備体操をした。
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