夫の運転

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私は夫と一緒に車で出かけた。私たちは自営業をしていて、荷物を得意先へ運んで代金を受け取るのだ。それが私たちの売り上げとなる。その代わり、経費もかかるから純利益はあまり期待できない。 とりあえず、受け取った代金は銀行に預金する。そこから月末に、今月かかった費用が落とされる。私の頭には、数字が駆け巡る。「今月はこれだけかかるから、それ以上稼がなくてはいけない」と焦る。 人に汗を掻かせて、税金をもぎ取り、自分はエアコンの効いた部屋にある椅子に座ってるだけで、炎天下や極寒での現場に携わる者を乞食と見下す特権階級の懐を潤す仕組みが気に入らない。テレビや新聞で報道される議員や官僚・公務員・皇室のスキャンダルを聞く度に腹わたが煮えくりかえる。 「偏差値70ほどの大学を卒業してるのがそんなに偉いのか!」と大声で叫んでみても仕方ない。とにかく、負け組に組み込まれた自分は、働きアリとして短い生涯を終えるしかない。 宅配を終え、事務所へ戻ろうとする夫は、私を助手席に乗せて運転席に座って車を走らせた。夫の運転は荒くて、まともに景色を見ていられない。私には危なっかしいが、運転してる本人はカッコいいと思ってる。あまりにも景色が早く過ぎていくので、私は目を閉じてしまった。目を閉じれば眠ってしまう。 私は、車の中にいる事を忘れてしまい、車が自分の事務所へ戻るまで眠ることになる。私の瞼には映像が現れ始めた。そこから夢の中へ入るのである。
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