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朝、登校すると何故か学校中が騒がしい。特に女子が。
騒がしさの理由も分からないまま教室へ行くと、友達のミカとレミが物凄い勢いで私の元へ来た。
「な、なに?どうしたの?」
驚きのあまり、声をうわずらせながら口を開く。
「凛真知らないの?3年生にイケメンの転校生来たって!」
「しかも大阪からだってさ!確か藤原って苗字らしいよ」
「イケメンで関西弁とか最高なんだけど!凛真、今から会いに行こうよ!」
興奮気味に話すふたりのおかげで学校中が騒がしい理由は分かった。
「あのねふたりとも。よーく聞いて?いくらイケメンでも関西弁でもうちら1年がほぼ接点のない3年と会話することなんて滅多にないの。それに3年生は就活やら受験やらで忙しいと思うの。なによりね、どんなに自分好みのルックスでもその人の性格まで最高とは限らない。実はとんでもない不良だったりサイコパスだったりするかもしれないでしょ?それにそんな理由で会いに行くのもどうかと思うけど?」
私は夢の世界へ旅立っているふたりを現実に戻そうとした。
「なによ、ノリ悪いんだから。てかそこまで言う事ないでしょ」
「なんか今日の凛真感じ悪ー。うちらふたりだけで行くわ、行こ」
ふたりは文句を言いながら教室を出る。
私は自分の席に座ると、ふたりの言葉を思い返す。
『しかも大阪からだってさ!確か藤原って苗字らしいよ』
『イケメンで関西弁とか最高なんだけど!』
「藤原、か……。まさかね……」
私は小学2年生まで大阪にいた。その時、ふたつ年上で私とよく遊んでくれたお兄ちゃんの様な人がいた。
その人の名前は藤原敬悟。幼い頃の淡い初恋の相手でもある。
「ないない、私よりふたつ年上で『藤原』って苗字の男子なんて大阪に何人もいるって」
私は自分に言い聞かせて授業の準備をした。
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