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私が敬くんを連れてきたのは特別棟の3階にある資料室。
「へぇ、この学校こないなとこあるんやな」
敬くんは興味深そうに室内を見回す。
「うん。ほとんど使われてないから埃っぽいけど……」
「せやなぁ。そんなことよりこっち来ィ?」
いつの間にか机の上に腰掛けていた敬くんは私を手招きした。
素直に近づくと敬くんは私の腕を引っ張り、抱きしめた。
思ったよりもガタイのいい体や逞しい腕、そしてあの頃より開いた身長差に、彼が男性なのだと意識させられる。
「やっぱりこうしてると落ち着くなぁ……」
敬くんはしみじみと言う。
「あの、敬、くん……?」
「凛真、アンタがおらんくなってからずっと寂しかってんで?寂しすぎて息苦しゅうてな……?」
掠れるような低いその声は震えていて、私は思わず抱き返した。
「やっと、まともに呼吸出来るようなったわ」
敬くんは私の目を見て嬉しそうに言った。
「今までだって呼吸してたでしょ?」
「さっき言うたやん、寂しすぎて息苦しいって。凛真は寂しくなかったんか?」
今にも泣きそうな顔をする敬くん。
「わ、私だって寂しかった……。転校生の話聞いた時、敬くんだったらいいなって思ったもん」
「てことは両想いって事でえぇやんな?」
「え?」
疑問を口にする前にあたたかいものが唇に触れ、視界いっぱいには敬くんがいて、キスをされたと気づくのに数秒かかった。
「け、敬くん!」
びっくりしてつい大声を上げる。
「嫌、やった……?」
悲しそうな敬くんの言葉に、私は必死になって首を横に振った。
「嫌じゃないよ、びっくりしただけで……」
「じゃあこれからは恋仲やな。ずっと、一緒にいような」
「うん」
敬くんのプロポーズめいた言葉が嬉しいと同時に気恥ずかしくて、これからの日々に思いを巡らせながら彼の胸に顔を埋めた。
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