第1話 : 甘い、甘い、苦い

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受け取る際に彼女の薬指に指輪がはめられているのが目に焼き付く。 胸が大きくドクリと跳ね上がった。 「け、結婚、するんですか?」 「そうよ~、来月が式なの」 嬉しそうに指輪を撫でながら微笑む彼女を見て、嬉しい報告なのに喜べなかった。 胸が締め付けられる感覚をどうにか抑えながら俺は聞く。 「もしかして、奥寺先生ですか相手って」 「嘘やだ、何でバレちゃったのかしら!」 頬を赤らめながら顔を両手で隠す仕草に胸が高鳴る気持ちと虚無感とが混じり合う。 言い表せない何とも言えぬ複雑な感情だった。 指輪を見た時に、どことなく奥寺先生が付けていた指輪と似ていたのだ。
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