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すごいきれいな人だ・・・と思った。
そう思ってから瑠依は愕然とする。
相手は生身だ。
それどころか男である。
そう、自分に言い聞かせた。
「僕と一緒に来る?」
「は?」
思わず聞き返した。
目の前の男からあり得ない言葉が出た気がする。
「僕と住まない?」
聞き間違いではなかった。
驚きで何も言えない瑠依に男が勝手に続ける。
「僕は直樹。池袋の病院に勤めてる医者だ。君、住むところ無いんだったら、うちに来ればって言ってんの。伝わってる?」
何も反応を示さない瑠依の目の前で、おーいと手を振りながら言った。
こうして瑠依は直樹と颯斗がいる今の家に引っ越してくることになる。
なぜ直樹が家も仕事もない瑠依を拾ってくれたのかは、未だに謎のままだった。
颯斗の会社からの帰り道、瑠依は家の近くのコンビニに入ろうとして足を止めた。
そして、周れ右をするとコンビニの向かいにあるスーパーに入った。
スーパーなど何年ぶりだろうか。
異世界のような空間に瑠依は落ち着かなくなってきた。
会社帰りのサラリーマンや割引された売れ残りを求めてやってきた主婦。
まず、どこから物色しようかと瑠依は辺りに目を走らせる。
颯斗に向かってあんな啖呵を切った以上、このままカップ麺を買って帰るわけにもいかなかった。
瑠依にだってそれなりにプライドはある。
とりあえず、ネットの料理サイトから夕食のメニューを選ぶことにした。
その中に、すき焼きを見つけて、何気なく見てみる。
その時初めて瑠依は、料理作りが予想以上に手間のかかることだということを知った。
同時に毎日のように、料理を文句も言わずに淡々とこなす颯斗に感心した。
そのまま、探すこと十五分。
ようやく瑠依は、簡単に作れそうなレシピを発見した。
カレーだった。
瑠依は以前、颯斗がカレーを作るのは簡単だと言っていたのを思い出した。
しかし、実際に作るとなると颯斗がどのように作っていたか、見当もつかなかった。
とりあえず、カレーに入っていそうな具材を一通りカゴに投げ込み始める。
そして最後にカレールー売り場にやってくると、迷うことなく甘口をカートに投げ入れた。
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