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結局、計画は自分の知らないところで勝手に進んでいた。
いつの間にやら、颯斗にも話を聞いていたらしい瑠依。
直樹は数日前、バーで女を口説いている最中に瑠依から日にち確認のメールを受け取った。
しかし、その後メールのことなどさっぱり忘れていて、ろくに返信もしないうちに、そのメールは肯定と受け取られていた。
「今日、行くからね」
きらびやかな街で女と戯れ、明け方近くなって帰ってきた直樹に瑠依は、開口一番そう告げた。
「は?」
確かに遊んでいた直樹も直樹だったが、それにしても急すぎではないか。
しかし、一週間ぶりぐらいに顔を見る颯斗は、前々からそのことを知っていたようで、全く驚いたそぶりは見せなかった。
ようは、単に直樹が毎日のように遊び歩いていただけというわけだ。
当然、嫌だとは言えなかった。
少し浮足立った颯斗に、いつもと変わらないテンション、服の瑠依。
そして、直樹たちは男三人で家族・カップルの巣窟、名古屋のイルミネーションテーマパークに向けて旅立つことになった。
「でもさ、三人で旅行なんていつぶりだろう」
何気ない会話をしようと話を振った颯斗だったが、そもそも以前に三人で旅行をした記憶はない。
おまけにコミュニケーション能力皆無の瑠依と、徹夜明けで死にかけている直樹。
反応がないのは当然のことだ。
颯斗と瑠依の相談の結果、名古屋へはなぜか車で行くことになっていた。
理由は人込み嫌いの瑠依にあると思う。
当然のように後部座席に座ろうとした颯斗に直樹は言った。
「さすがに徹夜明けの運転は、無理だから」
普段、颯斗と二人で出かけるときは常に直樹が運転していた。
ただ、記憶が正しければ颯斗も運転免許は持っていたはずだ。
案の定、
「あぁ、そうだったね。ごめん・・・」
と颯斗は運転席の扉を開けた。
直樹はじっとりとした瑠依の冷たい視線を受け止めながら、後部座席に座った。
小型のK自動車だ。
直樹が持っていたものを今は三人で使っている。
「じゃあ、出発するよー!」
気を取り直して、と後部座席に向けて颯斗が声をかけたが、残念なことに誰一人として答えなかった。
沈黙を守った一人である、直樹はこの旅行の行く先にとてつもなく不安を覚えていた。
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